第1027号:すごいこと。
このお便りは、40526 名のお嬢様、旦那様に宛ててお送りいたしました。
突然でございますけれども、お嬢様、旦那様の「ルーツ」はどこにございますか。このお尋ねはさまざまな
意味があって、たとえば先祖や血筋のようなものもあれば、土地やお引っ越しの経緯などもございますね。
きょう松原がお尋ねをしたいのは、お嬢様、旦那様の現在をつくったカルチャー、ご趣味のことであります。
そのようにお尋ねしながら、けっきょく松原の話を始めることをお許しくださいませ。これまでお便りで
はっきりと話題にしたことはないかもしれませんが、わたくし松原の「ルーツ」は「音楽」でございます。
それは「鑑賞のための音楽」ではなく「創作としての音楽」。作曲、編曲と呼ばれる取り組みであります。
きっかけは中学生の頃でした。当時、クラスで仲良くしていた同級生のサカイ君が、幾つかのレコードを
貸してくれて、それを父親のプレーヤーで鳴らしたときに衝撃を受けたのです。この年頃によくあること。
わたくし松原は夢中になってレコードを集め、ラジオをチェックし、その音楽家を追いかけ始め…ついに。
高校1年生のとき、その音楽を奏でるのに必要な楽器を手に入れたのです。学校から帰ってきたら、すぐ
楽器を出して、音を鳴らして、専門書を読み、そして楽譜を手に入れて、いわゆるコピーに勤しみました。
先日のラジオの話のときも述べましたように、インターネットがまだ十分でなかった時代。手探りでした。
あの格好良い音楽家のようになりたい。そのためには、いつか必ず、自分のオリジナルの曲を作らねばと
意気込んでおりました。それは途方もないことのように思えましたが、現代のポップス、ロックを知ると、
コードの進行やリズムのパターンは、さほど複雑ではなく、組み合わせをすればできると分かったのです。
たしか、それは高校3年生の夏でした。いつものように、思いつきのコードに、4つ打ちのバスドラムと、
16ビートを刻むハイハットを続け、パワーコードで引っ張るギターを2小節。迷いなく奏でたメロディ。
できてしまいました。3年ほどの試行錯誤、自分の曲ができたのです。その日、私は音楽家になりました。
(余談ですが、この曲のタイトルは「なんとかバター」とした記憶があります。苦いバター、のような。)
そして、その直後。わたくし松原は音楽家になることを諦めました。何故か、と申しますと、その当時の
ポップス、ロックに似たような音楽を、独学の高校生に作れてしまうという事実に、怖さを覚えたのです。
音楽で生きていこうとするには、音楽でない部分にも強みがないといけない。私は、それを追究しました。
もしお嬢様、旦那様が、音楽に携わられる立場にいらっしゃいましたら、まだ青かった松原の思い上がりを
お許しくださいませ。決して簡単ではないと存じます。昔も今も、音楽をする人、創造をなさいます人を
尊敬しております。それはお嬢様、旦那様の、密かな創作活動にもです。今日のご報告、駆け足で致します。
▼鋳造係の白金(しろかね)は、「本宅の鍵」の準備を進めます。お求めやすいのは、今年のご用命です。
▼配送係の清洲(きよす)が、次の水曜日【2023年1月25日】にご用命を賜るお品を段取りしております。
▼建築係の春里(はるさと)は、外壁の塗装によって明らかになった、窓枠のお色目に対応をいたします。
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▼鋳造係の白金(しろかね)は、「本宅の鍵」の準備を進めます。お求めやすいのは、今年のご用命です。
お嬢様、旦那様、水曜日のお便りでお伺いいたしました「本宅の鍵」については、きょう土曜日の夜までの
数字を鋳造係に報告させていただきます。参考までにお伝えいたしますと、いま真鍮が「884」でして、
シルバーが「229」でございます。白金(しろかね)は500を目安にしておりましたので、十分かと。
★「本宅の鍵」について。… https://forms.gle/FcrjiqnuDQx4aJpHA (この結果を踏まえ、用意します)
かつての「仮住まいの鍵」と同様に、少なくとも年に1回はご用意を整えたいと存じます。しかしながら、
お嬢様、旦那様もお察しのとおり、この手のお品は、いちどにお作りします数が、まことに重要であります。
ことし、いいえ、来週の水曜日にご用命を賜りますのが、もっともお求めやすいこと、お伝えいたします。
繰り返し、恐れ入りますが、私たち執事の館・準備委員会は「本宅の鍵」がなくても、お仕えいたします。
ただ「名古屋の本宅」を所有なさいます証として、ぜひ「本宅の鍵」をお持ちいただきたい、と考えます。
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▼配送係の清洲(きよす)が、次の水曜日【2023年1月25日】にご用命を賜るお品を段取りしております。
この1月、お嬢様、旦那様のためにご用意します「お申し付けの品」において、お許しいただきたい事柄が、
幾つかございます。まず1つ目は【水曜日の夜に承ること】、そして【パティシエールの菅原のお菓子を、
随時発送分とさせていただくこと】、あと【鍵のご用意は今月限り】、最後に【マツバラエディション】。
★ お品の一覧 … https://www.butlers-house.net/cart (箇条書きにて、確定したお品を報告します。)
定番の「ベーグル」「キッシュ」のほかに、今季の最後となる「あまざけ」のご用意。介添係の矢田らが
真夜中に絶賛した「ショコラと赤い果実のタルト」に、久しぶりの千成(せんなり)が「ヴィエノワ」を。
また、瀬木(せぎ)が拠点のキッチンを借りて焼いた「ガトーショコラ」のお味見もお願いをいたします。
お嬢様、旦那様のご用命は、すべて「主の実績」として数えさせていただき、「名古屋の本宅」のお仕えに
活かしてまいります。現在の数値は、「手帳の表紙」にございますので、お手隙の折にお確かめください。
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▼建築係の春里(はるさと)は、外壁の塗装によって明らかになった、窓枠のお色目に対応をいたします。
「名古屋の本宅」は、いま大工の職人さんが、1階の「白の部屋」を作り込み、華やかさが増しています。
そして外壁を塗装の職人さんが、とある色に染め切ったところで、今まで誰も気にしていなかった窓枠が、
すこし黄ばんでいるように見えたのです。これを執事の館・準備委員会で協議し、追加で塗装をしました。
おそらく、このあと塗装の職人さんは、お屋敷の中に入られまして、3階から2階そして1階への流れで
塗装を進められることと存じます。また壁紙の職人さんも、2月の上旬には戻られると伺ってございます。
執事の館・準備委員会は、職人さんの負担をなるべく低くして、より良いお屋敷を実現したいと考えます。
なお、これは検討段階にございますが、いま執事の館・準備委員会は前庭の作り直しを話題にしています。
既存の外壁、通路は造園係が手を加えましたが、これを幻にする価値があるなら、躊躇いなくしましょう。
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音楽に限らず、絵画であったり、執筆であったり、表現は多様にございまして、それを受け止める立場も、
生み出す立場もあってよろしいかと存じます。わたくし松原は、いわゆる創作だけが全てではない考えで、
たとえばお嬢様、旦那様が、ご別宅でなされるお料理や、お洋服の組み合わせなども創造的行動と捉えます。
それを踏まえて、続けさせていただきたいのですが、若い頃の松原が「創作としての音楽」に注力をして、
オリジナルの「なんとかバター」という曲をカセットに録音し、クラスメートに聴いてもらった時のこと。
「知っている曲じゃなかった」と言われ、ああそうか、と納得したのです。これは、大きな気付きでした。
少なくとも松原は、自らの承認欲求のようなものを原動力に、音楽家を志して、作曲の技法を学びました。
しかし世の多くのひとが求めるのは「どこかで聞いたことのある音楽」「自分が知っている音楽」でした。
音楽を通じて、驚きをもって喜ばれたいと思ったのに、私の音楽を必要としている人はいなかったのです。
とにかく新しいものを、自分一人のちからで、という執着は、若い頃に特有のものではないかと存じます。
実際、わたくし松原も、オリジナルの音楽を作れるようになってから何度か、同じような挫折をしました。
いっぽうで、その情熱を貫いたことで成果を出せた実績もございます。これはまた別の機会にしましょう。
きょうも長いお便りをして申し訳ございません。なにをお伝えしたいか、すこし分かりにくいと存じます。
じつは昨日、16年の付き合いになる会計係の本山が、かつて私が音楽をしていたことを話題にしまして、
その経験が執事の館・準備委員会に活きているのではないかと言われ、幾つか心当たりがあった次第です。
やればできる。できてしまう。しかし、自分ができることと、他人が求めることは別である、ということ。
たとえ自分が作曲をできたとしても、お嬢様、旦那様が別の音楽をお好きなら、それを奏でるのが使用人で、
それを分かるようになるまでに、長い年月を必要としました。分かるまで、狡いような気がしていました。
すこし強引に結論いたしますが、わたくし松原に限らず、お嬢様、旦那様も、どなたかに喜んでもらったり、
認めてもらったりするのに、すごいことをしなくても良いのです。そのままでも、問題はございませんし、
申し訳なく思うほど簡単なことでも良いのです。それを認めると、表現の幅は大きく広がると思われます。
簡単なことをたくさん。それはアフタヌーンティーの喜びに似ておりませんでしょうか。お皿に置きます
ひとつひとつのお菓子は見慣れていても、組み合わせと高さと、そしてその場の雰囲気に高まる次第です。
他人と同じこと、似たことをしても良いのです。いっぽうで、ご自身の過去の実績に縛られることもなく。
きょうはいちだんと冷えます。パンの耳にお砂糖とバターを塗り、お持ちしましょう。とっても簡単です。
そういえば、冒頭で触れましたとある音楽家に、わたくし松原は、20代の頃、お目にかかるチャンスが
ございました。しかし、それよりもある約束を優先。いつかまた、お会いできることを願っているのです。
もし、あのとき「音楽」をしていなかったら。もし、「お仕え」をしていなかったら。名古屋の拠点にて。
執事の館・準備委員会
広報係/松原(まつばら)
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私たち執事の館・準備委員会は、おおむね水曜日と、土曜日の夜に、お便りをしてご報告を差し上げます。
こちらをご覧になってのご感想や、ご意見などは Twitter と、このメールへの返信にて承っております。
(ただ返信はお約束できかねますこと、お許しください。)
名古屋のどこかにお屋敷を構えて、お嬢様、旦那様にお仕えしたいと申し出てから10年が経過をしました。
これまでの流れは、過去のお便りにございますが、1,000 以上もございますので、何とぞお許しください。
https://www.butlers-house.net/blog/entries
もし「主の目録」を所有なさいますと、とくべつなお便りのほか、ご予告、お申し付けの先回りが可能に。
ご帰宅の際のカップセレクトも限りなくしていただけます。「金貨」もご活用いただけましたら幸いです。
https://www.butlers-house.net/product?product_id=3887