第75号:シャンデリアは船の上。
このお便りは、25404 名のお嬢様、旦那様に宛ててお送りいたしました。
お嬢様、旦那様、お嬢様、旦那様!もう時計は午前9時を指しております!
日曜日とはいえ、明るくなるまでウトウトなさっていては、また夜遅くまで眠れなくなりますよ。
今日はお出掛けの予定と伺っておりますけれども、少しだけお時間ください。
「名古屋の仮住まい」について、お嬢様、旦那様のお耳にお入れしたいことがございます。
宜しいですか?
はいっ!背伸びして…!息を吸って…!吐いて…!
眠気覚ましにペパーミントのハーブティーを、どうぞ…。
「名古屋の仮住まい」は、あらかじめお伝えしておりましたスケジュールで工事が進んでおります。
木の扉や、お部屋のモールディング(装飾)が備わり、空間の完成形が朧げながら見えて参りました。
壁の凹凸をパテで埋め、きれいに馴らしたところには、クロス(壁紙)の貼付が始まっております。
まず最初は廊下の天井…これに次いで白の部屋や、玄関などにも演出が施されると。
くわえて、第1期工事のプランに含まれていなかった2階の厨房も、現場の職人さんの頑張りで、
来週半ばに完成する見通しである、という報告を受けております。これは感謝せねばなりません。
ここまではまったく問題ございませんね。
ええ、察しのよいお嬢様、旦那様なら、もうお分かりですね…。
シャンデリアが、間に合わないのです…。
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ご存知のとおり執事の館・準備委員会は、建築係の橘(たちばな)の主導で「名古屋の仮住まい」の
設計と建築を進めて参りました。紆余曲折はございましたけれども、お嬢様、旦那様をお迎えする、
「仮住まい」として十分なものが、まもなく出来上がろうとしております。
この空間でお使い頂く家具やシャンデリアは、意匠係の高岳(たかおか)が検討に検討を重ねまして、
現段階で経済性と品質を両立しながら、確実に4月中に納品出来るものを選んでおりました。
しかし、前回のお便りと同じ理由…年度末、増税前の需要などが重なった結果、いま現在、
海外に特注していた2台のシャンデリアは、まだ洋上にあるという報告がございました…。
また、2階の厨房に置かれる予定だった国産のデッキオーブンも、受注が殺到しているために、
「名古屋の仮住まい」への納入は来週末になるであろうとのこと…家事係の試作ができるのは、
再来週のことになるでしょう…。致し方ないこととはいえ、やるせない思いでございます。
さらに小耳に挟んだ話では、電気、ガス、水道の切り替え工事にも、相当な時間が掛かるとか。
場合によっては調達係の守山(もりやま)が私物で所有している大型の発電機を運び込み、
裸電球のもと、リハーサルを行うことになるかもしれません。
先週は諸々の事情によって、リ・スケジュールを強いられる場面が出て参りました。
しかしながら私たち執事の館・準備委員会は、昨年お嬢様、旦那様とお約束した、
2014年春の開館、という誓いはどうしても果たさねばなりません。これは、絶対であります。
改めて、いま与えられた環境のなかで、出来る限りの取組みをお約束致します。
ひきつづき、ご理解とご支援を何卒よろしくお願い申し上げます。
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並行して、給仕係と介添係の従業員研修、家事係の試作/調達を行なっておりますが、
こちらも課題が山積しております。多くの従業員は執事の館・準備委員会に合流をして1ヶ月が経過。
現時点で委員会が認識している、それぞれの成果と課題をお嬢様、旦那様に報告致します。
(以下の文章は執事の館・準備委員会の教育係によるものを、わたくし松原が加筆修正しました。)
▼給仕係
伏見(ふしみ)
https://www.butlers-house.net/payroll/fushimi
履歴書でご覧頂いているお写真のとおり、見た目や声の印象が良く、黙っていても充分絵になる点は、
伏見のアドバンテージと言っても差し支えありません。過去に会社経営、営業の経験がありながら、
従業員研修の最中は出過ぎず、引き過ぎず、という間合いの取り方が「執事的」とも言えましょう。
ただし、「名古屋の仮住まい」の給仕という観点で評価すると、お嬢様、旦那様と執事という
関係性を定義するコミュニケーションには、まだ改善の余地があるかと存じます。
時には思い切った冗談を言えるようになれば、人間としての器も大きく演出できるはず。
新富(しんとみ)
https://www.butlers-house.net/payroll/shintomi
理知的な外見のとおり、研修の最中にぽろっと良い「気付き」を提供される点は誰もが認めるところ。
ただ、とても良いことを仰っているのに、それが誰に伝えようとした言葉なのかが分かりづらいこと、
お話の途中に噛んだり、言い淀むことが多いために、コミュニケーションが破綻しがちであります。
良く言えばシャイなのでしょうが、初めて帰宅されたお嬢様、旦那様にとって、彼の不器用さはどう映るか…。
ひとの話を聞いたあと、頭の中で熟考してから言葉を発するのではなく、良い意味で表面的な、
てきとうな反応が出来るようになれば、新富の知識や想像力が輝くのではないかと思う次第です。
徳川(とくがわ)
https://www.butlers-house.net/payroll/tokugawa
掘りの深い顔、白髪を気にして染めた茶色の髪が目立っておりますが、従業員研修に参加してから、
がらっと振る舞いが変わったひとり。持ち前の反応力、対応力で、さまざまな問いかけに対して、
機転の利いた回答をするようになりました。ただしこのとき、会話の最中に思いついた返答を、
即座に返そうとしてしまう為、やや慌ただしい会話になってしまう傾向にございます。
落ち着き、大らかさが身に付けば、お嬢様、旦那様にもお寛ぎ頂けることでしょう。
そして「問いに気付き、反応すること」に慣れたあとは、「自ら気付き、問いかけること」を。
東別院(ひがしべついん)
https://www.butlers-house.net/payroll/higashibetsuin
飲食店での勤務経験を活かして、従業員研修でも積極的にシェアする姿勢は誰もが頼りにするところ。
また厳しい指導にも心折れず、取り乱さずに受け止めるところも東別院の強みと言って良いでしょう。
しかし、会話を始めると話題のコントロールが効かずに、独り舞台になってしまうことと、
自分にとっての正解を譲らないことで、お嬢様、旦那様の給仕に差し支えなければ良いのですが…。
給仕の知識や経験を覚えることよりも、シンプルな業務で要件を把握し、段取りをもって業務を
遂行するため、4月7日(月)より家事係に出向することになりました。
久屋(ひさや)
https://www.butlers-house.net/payroll/hisaya
実直で真面目、もともと、あまり話し上手ではないと言うとおりではありますが、熱意と誠実さで、
久屋の右に出る者はおりません。何度も指導を受け、厳しい言葉を浴びながらも怯まずやり直す、
古くさい言葉で表現するなら、根性のある者と言えましょう。あと、人懐っこい笑顔が良い。
課題は明確で「考えすぎないこと」。会話の2手先、3手先を考えながら話すのではなく、
いま投げ掛けられた言葉を柔らかく受け止めて、必要なら頷き、必要なら問うことができれば、
お嬢様、旦那様にも親しみをもって接して頂けるのではないでしょうか。
やる気は誰もが認めるところですが、自己管理面ではやや不十分であることも否めません。
自分自身が健康で、笑顔で、基本的に楽しそうであることが何よりも大切だと思います。
▼介添係
白壁(しらかべ)
https://www.butlers-house.net/payroll/shirakabe
「名古屋の仮住まい」の理念を誰よりも深く理解し、給仕の核となる精神から、作法に至るまで、
あらゆる面で指導を頂いています。長年の経験というよりも、白壁本人の感性の鋭さがあるからこそ、
きめの細かいレッスン、フォローが実現できているとしても過言ではないでしょう。
ただ時折、その鋭い目線や感性が、漠然と怖さに映ることがある…というのは求め過ぎでしょうか。
更に元来の性格故、致し方ないのかもしれませんが、誰よりも負けず嫌いで、弱みを見せない姿勢が、
結果として誰の為にもなっていないことがあります。例えば、そこに居るだけでも構わないのです。
矢田(やだ)
https://www.butlers-house.net/payroll/yada
落ち着いた態度、客観的なメッセージ。常に第三者の存在を考慮した思考は研修中にも活きています。
あまり喜怒哀楽の感情表現が豊かなほうではありませんが、誰よりも心根の優しい人物でしょう。
新しい取組みや表現に挑戦し、密かに改善を重ねているところは担当も評価をしておりますが、
もちろん現時点ではそれぞれの給仕が独立していて、物語を紡ぐまではもう少し掛かるかと。
今後の矢田が、ふとした会話のリズムで優しい雰囲気を漂わせることができるようになれば、
お嬢様、旦那様からの圧倒的な信頼を得られるのではないか…と考える次第です。
伏屋(ふしや)
https://www.butlers-house.net/payroll/fushiya
外見の柔らかい印象とは対照的に、物事の本質的なところに鋭く切り込む場面が多くございました。
その気付きの価値を、伏屋自身があまり認識していないところは、問題といえば問題でしょう。
つまりそれは、いま必要なものと、必要でないものを振り分けて対応する能力とも言えるからです。
また多くを受け入れるところも一長一短であります。許容範囲が広いことは歓迎すべきですが、
時には良いものは「良い」、悪いものは「悪い」と言い切る覚悟のようなものも必要です。
とはいえ、厳しい従業員研修であります。伏屋の朗らかさに救われている者も少なくないでしょう。
神宮(じんぐう)
https://www.butlers-house.net/payroll/jingu
4月の半ば、遅れて従業員研修に合流した神宮は、一貫して「お嬢様の目線」に立っております。
実感のこもった神宮の意見や感想に、給仕係が耳を傾ける場面が随所で見られました。
しかし自身の疑念を、その場ですぐに解決を試みるあまり、研修中に私語と取られかねない行動や、
現段階ではまだ結論の出ない問題を深追いしてしまう傾向が…几帳面、とも言い換えられますね。
お迎えを想定した訓練では、自分の担った役割を意識し過ぎるのか、主や執事の動きを顧みずに、
給仕の流れを崩してしまうところが課題です。脇役として立派にお仕えすることもよりも、
いっそ印象に残らないくらい抑え気味にすれば、バランスが取れるのではないでしょうか。
▼家事係
錦(にしき)
https://www.butlers-house.net/payroll/nishiki
未だに自身の経歴について多くを語りたがりませんが、断片的な情報からも相当な経験を積まれ、
惜しむことなく「名古屋の仮住まい」でお嬢様、旦那様に尽くす姿勢を随所に感じます。
「自分の作りたいお菓子」を作ることよりも、「喜んで頂けるお菓子」を作りたい、という志向こそ、
準備委員会のコンセプトを体現しているでしょう。ただ、頑張り過ぎて拘りの配分を間違えたり、
焼菓子の試作を休んで、パスタや肉料理を試作する口実を常に探すあたりは注意が必要です。
お菓子も料理も間違いなく美味しいのですが、良い意味でお店っぽくない、家庭的な味わいが、
どれだけの主に受け入れられるかが課題。ひとまず碧南市で買い占めたゴボウは片付けましょう。
東山(ひがしやま)
https://www.butlers-house.net/payroll/higashiyama
半年以上にわたって、時計修理部門で修行を積んだ経験、過去のバリスタとしてのキャリアを買われ、
給湯室…つまり紅茶係に就任。今までは、どちらかと言えばコーヒーの経験が多かったために、
紅茶の製法、淹れ方などについてはまだ勉強を要します。また年齢が若いこともあって、
肩に力が入りすぎるところ、責任を感じすぎるところは時間を掛けて慣れるしかないかと。
それから、度々 Twitter でご指摘を頂いているとおり、文字をもう少し上手く書けるようになれば…。
常磐(ときわ)
https://www.butlers-house.net/payroll/tokiwa
あとで話題にする滝川の合流によって、4月7日(月)より家事係から給仕係に配属が変更。
東山と同様まだ若い青年ですが、数年のホテル勤務で培った堂々とした振る舞いに期待が集まります。
幼い頃は、笑顔の絶えなかったという彼ですが、現在はむしろポーカーフェイスを崩さないタイプ。
それが時としてお嬢様、旦那様に、冷淡さや、機械的な印象となって伝わってしまうかもしれません。
今後はどのようにして、かつての優しい表情を取り戻すかが課題でしょう。
鳴海(なるみ)
どちらかというと調理が専門の錦(にしき)をサポートするため、新たに採用された若いパティシエ。
厳しい指導にも折れず、自分に与えられた課題を次々とこなす姿に将来性を見出す者も多くおります。
鳴海もまた若く、経験不足であることは否めません。スタンダードなお菓子を作ることは出来ても、
オリジナルのものを、アレンジを効かせたものを、となると悩んでしまうことが多くありました。
今は辛抱のときです。日々、様々な挑戦と失敗を繰り返し、経験を積み重ねるうちに、
ディナーの最後を彩る最高のパティシエとして活躍するのではないでしょうか。
滝川(たきかわ)
https://www.butlers-house.net/payroll/takikawa
この春、ある大学の医学部医学科を中退し、「名古屋の仮住まい」に合流した若者。
せっかく積み上げたキャリアが勿体ない…という声も多くございましたが、本人の意思は固く、
4月の中旬から東山のもと、給湯室で修行を積むことになりました。まずはお皿の取り回しから。
現時点では社会人経験がございませんから、ゼロからのやり直し。もちろん覚悟は出来ております。
以上、現時点での報告となります。
お嬢様、旦那様のご帰宅をお迎えするまでの間、
従業員それぞれの良いところを伸ばし、苦手なところを克服出来るよう精進致します。
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お嬢様、旦那様、まだお出掛けの時間ではございませんか?
最後に3点ほどお伝えしたいことがございます。駆け足で…。
まず最初に「愛知県碧南市のソーセージ」は、3月29日に承った4月分の申し付けを満了。
いま4月20日分で数量調整中。残り4個と伺いましたので、ご入用でしたらお早めに。
https://www.butlers-house.net/product?product_id=26
また「愛知県小牧市のバウムクーヘン」の抹茶版、「愛知県西尾市のバウムクーヘン」は、
5回目の試作でようやく、お嬢様、旦那様にお勧めできる品質になりました。
工場長の黒川さんが試行錯誤を重ねた結果、卵やバターといった素材の個性を抑えて、
生クリームと抹茶の絶妙なバランスを実現。抹茶が苦手な主にも一度お試し頂きたいと思います。
さらに来週、4月10日(木)の午後7時頃、「主の手帳」の帰宅予告ページを一時的に公開。
お嬢様、旦那様がご帰宅を予告し、ご友人をお誘いする流れをお試し頂ければ幸いです。
このとき手帳係が負荷テストと、使用感のヒアリングを行ないますのでお力添えをお願い致します。
あ、お嬢様、旦那様っ!もうお出掛けの時間です!
お洋服は「愛知県名古屋市のワンピース(おとなのおちつき系)」で結構ですから、急いで!
名古屋市昭和区、ロイヤルホスト八事店にて。
このお手紙は、執事の館・準備委員会の広報係、松原がお送りしました。
準備委員会のあゆみは「過去のお便り(バックナンバー)」から、ご覧くださいませ。
http://www.butlers-house.net/blog/entries
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